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今回はタイトルにもあるように、世の中からエンジニア(整備士)がいなくなる可能性が高いことについて書いていきたいと思います。
セールスと会社はエンジニアがいるからこそ成り立つ
自動車販売会社(中古も新車も)が成り立つ絶対条件に、エンジニアの存在が必要不可欠なのはご存知でしたでしょうか?
多くの販売会社では、セールスマンを重視しています。その理由は単純なものでして、車を売る営業マンがいなければ会社が利益を確保し続けることができないためです。
しかし、営業マンよりもさらに重要な存在に【エンジニア】がいます。販売したクルマの整備や修理を行う人がいなければ、どんなに優秀な人材であっても車を売る事はできません。
販売したクルマをしっかりフォローしていく事ができなければ、お客さんとの間に信頼関係を築くことができません。車を販売することで一時的な利益は得られますが、商売で最も重要なリピーターを確保することができないため、会社としても存続することは至難の業となります。
ブログや転職サイトではあまり取り上げられませんが、裏方として会社とセールスマンを支えるエンジニアは特別重要な存在だということを知ってもらえたでしょうか。
エンジニアを目指す為の整備学校は定員割れ
エンジニアは自動車整備学校に通って知識や経験、資格を取得してから社会に旅立ちます。
昔であればクルマ好きが集まる人気の学校でしたが、今となっては例年定員割れとなり、そもそも学校の運営自体が危うくなっているようです。
定員割れするほどエンジニアの卵が少なければ、ディーラーやモータース、中古車販売店やオートバックスなどのカー用品店でエンジニア不足に陥ってしまうことは明白です。
それでは、なぜこれほどまでにエンジニアを目指す人が少なくなってしまったのか。その背景には、主に3点の原因が関係しています。
そもそもクルマ好きが少ない
時代で言えば、~2010年ほどまでは面白いクルマが生産されていました。
日産シルビアやワンエーティ、ホンダインテグラやS2000、マツダRX7やRX8、スバルWRXやレガシィ、トヨタマーク2やクレスタ、スープラはもちろんのこと、スポーツカーからワンボックスまで面白いクルマは多岐にわたり、旧車もそこまで高額ではなく程度の良い個体も数多くありました。
クルマ好きはこれらを自身でカスタムし、ほとんどの若者には「いつかは乗りたい憧れの車種」が必ずあったように思います。そんなぼくもそのうちの一人です。
しかし、今となってはそれら面白いクルマ達も多走行距離となり、仮に程度が良い個体があったとしても価格はかなり高騰しています。旧車に至っては高級車と同額~スーパーカー並みの価格がついているものもあります。
とても若者が手を出せる価格ではなくなり、ましてや世の中はハイブリッドや電気自動車の時代です。友達や親御さんも、世の中の流れに沿った車種に乗っています。
こういった環境の中、クルマ好きが生まれることは稀であり、かつその中の一握りがエンジニアを目指すことになります。
より良い労働環境を求めている
エンジニアの仕事はとても過酷です。エアコンも暖房もほとんど効いていないピット内での作業を一日中する訳ですから、夏は汗だく、冬は極寒の環境で働かなければなりません。エンジンからはものすごい熱気が放たれ、夏場は特に厳しい環境となります。
オイル等の油汚れと共に作業をするその姿は、セールスマンである我々から見ても本当にしんどそうです。
さらに、追い打ちをかけるのが「作業内容」です。クルマ好きが功を奏してエンジニアになれたとしても、その作業内容は思った以上に単調となります。オイル交換・半年点検・1年点検・車検といった具合に、車種こそ違うもののその作業内容はほとんど毎日同じことの繰り返しとなります。
クルマ好きでエンジニアを目指したのであれば、車高を変えたり、ホイールをツライチにしたり、マフラーを変えたり、エンジンをパワーアップさせたり、エアロパーツを付けたり、カスタムに関わる仕事を想像していたことでしょう。しかし、実際の作業はとても単調で、しかも今時のクルマとなれば面白いはずもありません。
毎日毎日、アクアやプリウスを整備することを想像してみて下さい。実際、本当のクルマ好きのエンジニアほど転職しているのが現実です。
仕事はきついのに給料が安い
エンジニアは、営業マンと会社を支える重要な存在だと言いました。そして労働環境はとても過酷だとも言いました。
華の営業マンは成績が良ければ給料も良く、年収1000万円を超えている人もけっこういます。
対するエンジニアの給料はお世辞にも良いとは言えず、手取り10万円台前半が当たり前の世界だったりします。年収で換算すると300万円~が平均ではないでしょうか。
会社の考えとしては、エンジニアは与えられた仕事をこなすだけであって、生産性が無いということです。それに比べて、営業マンは販売利益、整備利益、その他商品の利益を生む新車を売っているため、それに応じてインセンティブが発生するという仕組みとなっています。
しかしながら、慢性的なエンジニア不足&過酷な労働環境という事を考えれば、そろそろエンジニア全体の給料水準を底上げしなければ、近い将来、自動車産業は成り立たなくなってしまいます。
車が売れる売れない問題よりも、整備する人間がいなければこの業界は間違いなく衰退していきます。
打開策はあるのか
エンジニアがいなくなり、車の販売が衰退することによって、メーカーやそれに関わるさまざまな自動車関連企業まで影響が出ることは間違いありません。
根本的にこの問題を解決するためには、先に述べたように給料水準を上げてお金の面で魅力的な職業にする必要があります。また、その次にしなければならない事は労働環境を良くすることでしょう。
こちらもコストは掛かってしまいますが、屋根だけあるほとんど屋外のような環境ではなく、完全に屋内で作業できるようにし冷暖房を効かせ、清潔感のあるピットにする必要があります。
このどちらも出来ないのであれば、車の耐久性を上げ、今よりももっと壊れにくくし、ほとんど整備の必要がない製品にしていくことが急務となります。また、いざ壊れてしまったとしてもプラモデルの部品を交換するかのような簡単な構造にしなければなりません。
最後に、中古車販売会社のエンジニアの労働環境を良くする為には、先にディーラーの労働環境や給料水準を改善する必要があります。すべてに影響を及ぼすディーラーがまず変わる必要があり、将来の自動車産業を担っているといっても過言ではありません。
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